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Cuatro lunas 4つの月

メキシコ映画 (2014)

4つの全く無関係な話が、平行かつランダムに流れるゲイ映画。一番幼いのが11歳のマウリシオ、後、30代の2人をはさみ、最高齢は60歳を超えるホアキンの4人が、個々の話の主人公になっている。マウリシオの登場場面は、①02:00.37-02:37.90、②04:53.96-05:26.95、③10:31.08-11:17.42、④13:25.76-14:24.07、⑤22:33.06-23:49.88、⑥32:34.20-34:40.95、⑦52:46.58-53:34.25、⑧54:36.14-60:00.63、⑨61:46.86-62:34.79、⑩81:55.07-84:02.70、⑪88:15.03-89:17.76、⑫93:24.51-94:37.33、⑬97:50.61-99:41.76、⑭100:18.76-101:14.35、⑮104:26.84-104:52.49の15シーンに分かれている。合わせると約21分になる。映画全体のクレジットを除いた部分が104分なので、少し短めになっている。ゲイ映画は好きではないので、他の部分は一切観ていないし、逆に、無関係なので観なくていい構成になっているのは安心できる。この映画は2014年の公開なので4年前になるが、LGTBの人たちに対する偏見は急速に薄れてきているので、映画の中でマウリシオに対し、いとこでありながら偏見を丸出しにするオリベが憎たらしくて最低の人間のように見えてくる。学校の対応も不適切だが、今ではこんなことは起きなくなっていると思いたい。マウリシオの部分だけ切り取って観ることはできないので、ジャンプする際に他のパートも少しは目に入ってしまうがマウリシオの部分だけは、相手が子供なので肉体的な露出が全く起きないよう、台詞だけで済ましているのは、抑制された上手な映画つくりだと思う。

マウリシオは、いとこで、男らしいオリベが大好き。何とか気に入ってもらおうと、オリベの好きな『ストリートファイター』を買い、家に連れて来るが、スーパー版じゃないとケチをつけられてがっかり。それでもめげずに、家事の手伝いをしてまでスーパー版を買い、オリベのご機嫌をとる。そして、その勢いで、オリベの割礼に話題を持っていき、触ろうとして、ホモ野郎と蔑まれる。オリベは、それを、親戚だからと秘密にするようなことはせず、学校で言いふらし、マウリシオをからかい虐め、殴る。その暴力に対して両親が呼ばれるが、その場でオリベは謝るどころかマウリシオの行為を2組の両親の前であからさまに話す。恥を曝したマウリシオは寝込み、父はマウリシオを見放す。しかし、優しい母はそんなマウリシオを優しく慰める。

マウリシオを演じるガブリエル・サントーヨ(Gabriel Santoyo)は、年齢不詳だが、11歳という設定に矛盾は感じない。繊細な心の少年という役どころを、とても上手に演じている。前作は、『Las lágrimas(涙)』(2013)。2番目にクレジットされているので重要な役だが、メキシコの店でもDVDは入手不可能。WEB上で出回っている写真のみの紹介となる。
  


あらすじ

映画開始2分ちょうど。タイトル・ロールの途中で、映像が挿入される。学校が終り、マウリシオとオリベが学校の外で話している。2人はいとこ同士。主人公のマウリシオは11歳、オリベは同年という設定かもしれないが、見た目は数歳年上。オリベ:「お前、プレイステーション持ってるんだな?」。「うん、家に来れば、一緒に『ストリートファイター』やれるよ」。「それ、新しい奴か?」。「そう」。「お前んチ、いつもお迎えドベなんか?」。「今日はなぜか遅いんだ」(1枚目の写真)。マウリシオは、話題を「ストリートファイター」に戻す。「お気に入りのキャラは誰?」。「ホンダ(エドモンド本田)」。「ホンダなんか、誰も使わない」。「じゃあ、お前は?」。「チュン・リー(春麗)」(2枚目の写真)。「お前ゲイか? 女じゃないか」。「関係ない。素早いんだ」。
  
  

2人は、マウリシオの部屋にいる。マウリシオからパッケージを渡されたオリベは、「これ、スーパー版じゃないぞ。従来版だ。追加の新キャラが入ってない。スーパー版には6人の新キャラが入ってるんだ」。「知らなかった」(1枚目の写真)「だけど、やるんだろ?」。「ああ」。マウリシオはパッケージからディスクを取り出す(2枚目の写真、矢印)。そこに、母が顔を出し、「あと10分で食事よ。だから、降りてらっしゃい」と言い、ゲームは中止に。
  
  

その日の夜、マウリシオは、床のマットレスにシーツを敷いている(1枚目の写真)。「ほんとに、ここでいいいの? 僕がこっちに寝て、君はベッドを使ったら?」。「こっちでいいよ」。オリベはすぐに眠るが、マウリシオはオリベの寝顔を見て、幸せそうな顔になる(2枚目の写真)。
  
  

翌朝。2人はキッチン・テーブルで簡単な朝食をとっている。父は、仕事に遅れるので、朝食抜きで出かける。オリベがミルクを飲むと、それをマウリシオがじっと見ている(1枚目の写真)。母は、「2人とも遅刻するわよ。もう、終わった?」と訊く。オリベ:「はい」。マウリシオ:「あとちょっと」。母は、「オリベは鞄を取ってらっしゃい。マウは終わったらお皿を片付けて。ママは車を出してくるわ」と言うと、オリベの皿をシンクに入れて出て行く。マウリシオは、自分の皿をシンクに入れると、テーブルに残った2つのコップをシンクの横に置く。そして、オリベが飲んでいたコップを手に取ると、コップの縁を口につける(2枚目の写真)。
  
  

その日の夕食の場で、マウリシオは父に、「新しい『ストリートファイター』が買いたい」と言い出す(1枚目の写真)。「買ったばかりじゃないか」。「あれ古かったんだ。6人の新キャラ入りの新バージョンが出てる」。「だが、あれは、お前が自分で選んだんじゃないか」。「他のが出てたなんて知らなかったんだ」。「あの手のものは高価なんだ。無理だな」。「ママ、僕、欲しいんだ」。それを聞いた父は、「何のつもりだ?」と怒り出す。「駄々なんかこねて。いい加減にしろ」。それでも、マウリシオはあきらめない。「成績だって良かったし…」。母は、「今 持ってるのを売って、お金を貯めたら?」と妥協案を出す。「誰が、古いのなんか買うの?」。母:「じゃあ、家事を手伝ったら…」。父:「それじゃ甘い。作業部屋の整理を手伝うのが条件だ」(2枚目の写真)。
  
  

日曜日。マウリシオは教会に行き、順番を待って告解室に入る(1枚目の写真、矢印)。定型句を交わした後、マウリシオは、「僕は悪い人間です。悪いことをしました」と言い、「同性愛は罪ですか?」と尋ねる(2枚目の写真)。「安心おし」。「罪じゃないのですか?」。「同性愛は罪だよ。しかも、非常に重い罪だ。しかし、君は何も心配することはない。君は同性愛ではない、マウリシオ。そんなことはあるはずがない」。神父にそう言われても、マウリシオの心は晴れない。礼拝堂の長椅子に跪いて許しを乞う(3枚目の写真)。
  
  
  

日曜のミサが始まり、マウリシオは教会の少年少女合唱団の一員として、最前列中央で賛美歌を歌う(1・2枚目の写真)。それを聴いている両親の顔は幸せに溢れている。
  
  

夕方、キッチンでマウリシオがディナー作りの手伝いをしている(1枚目の写真)。「ママ、これでいい?」。「上手ね」。褒められて、嬉しそうだ(2枚目の写真)。母が、オーブンから丸焼き鳥を出したところで玄関のチャイムが鳴る。「伯父さんと伯母さんが見れたわ。ドアを開けてきてもらえる?」。ドアを開けると、伯父、伯母の後ろにオリベもいる。マウリシオは、すごく得意そうな顔で、「見せるものがあるよ」と話しかける(3枚目の写真)。このオリベ、いつも不機嫌な感じで表情を変えない。
  
  
  

夕食の後の会話。母→伯父:「じゃあ、ケベックに行くの?」。伯父:「クリスマスは、ママと過し、そのまま数日いようかと」。父:「じゃあ、新年もケベックかい?」。伯母:「そのつもりよ」。オリベの顔は実に不機嫌。マウリシオは、「行こう」と目で合図すると、すぐに一緒に席を立つ。そして、マウリシオの部屋。苦労して手に入れたスーパー版のパッケージを見せる。「すごいな」。「プレーしたい?」。そして、2人で対戦(1枚目の写真)。どうやっても、マウリシオには勝てない。「なんで、そんなに強いんだ?」。「練習さ」。「これ、いいな」。「うん。貸してあげてもいいよ」。「いや、これなら自分で買う」。「ホント言うと、もう飽きたんだ。持ってっていいよ」。「だけど、いつ返せるか分からないぞ」。「いいさ。十分練習できるから、次は、僕に勝てるだろ」。そう言われても、オリベはニッコリともしなければ、ありがとうも言わない。マウリシオ:「で、学校の方は?」。「まあまあ」。ここで、ついにマウリシオが思い切って話題を変える。「あのね…」(2枚目の写真)「聞いていいかな?」。オリベは僅かに頷く。「割礼って知ってる?」。「うん」。「割礼してる?」。「ああ」。「僕は、してない」〔伯母がユダヤ人の伯父と結婚し、ユダヤ教に改宗した?〕。嫌な話になったので、オリベは、「もう1回やるか?」と訊く。マウリシオは頷くが、話題は変えない。「割礼してないやつ 見たことある?」。「ああ。クラブで。シャワーの時だ」。「僕、割礼って見たことないんだ」。「おい、プレーするぞ」。「ねえ… 見せてくれない?」。「何で? ホモじゃあるまいし」。「言ってみただけ」。そう言いながら、話はさらにエスカレート。「もし、僕のを見せたら、見せてくれる?」。「まあな」。チャックを開ける音〔映像には、顔が映るだけ〕。「ほら。君の番だ」。「ドアをロックしろ」。「ロックしてある」。チャックを開ける音。「ほら」。「(割礼すると)きれいなんだ」。「同じさ」。そして、言ってはならない最後の言葉。「ねえ… 触っていい?」(3枚目の写真)。「ホモのマネはやめろ」。「こんなになってるんだ」。そして、手を伸ばして触る〔映像には、顔が映るだけ〕。オリベは、マウリシオをにらむと、「この、くのホモ野郎!」と見下したように言い、立ち上がると部屋を出て行く(4枚目の写真、矢印)。
  
  
  
  

後を追って部屋を出たマウリシオは、オリベが何か言うのではと、心配そうに見ている(1枚目の写真)。一方のオリベは、自分の母親のソファの肘の部分にお尻を乗せ、マウリシオを嫌な物でも見る目で見ている(2枚目の写真)。
  
  

翌、月曜日。マウリシオが学校の屋外階段に腰を降ろしてバッグの整理をしていると(1枚目の写真)、正面の通路で、オリベが3人の仲間に何かを話し、みんなでマウリシオの方をあざけるような顔で見る(2枚目の写真)。それに気づいたマウリシオは辛そうだ(3枚目の写真)。
  
  
  

それから、しばらくして。マウリシオが男子トイレから出てくる(1枚目の写真、矢印)。すると、その横で待ち構えていたオリベは、「お前、なんで男子トイレに行った? 女子か ホモのトイレに行けよ」と、意地悪く声をかける。マウリシオが無視して前を通り過ぎると、後をついてきて、「お前が男子トイレに行ったのは、誰かのを触るつもりだったんだろ?」と しつこく言い、背中を押す。「(昨日は)俺のを触りたかったんか、それともマスかきたかったんか?」(2枚目の写真)〔実に嫌な奴だ〕。マウリシオが何もいわないので、「お前に言ってるんだぞ、ホモ野郎」「聞いてるのか、ホモ」と頭を強く押す。「放っといてくれ」。「放っとけだと、この野郎?」。3対1でマウリシオを虐める(3枚目の写真)。
  
  
  

学校での傷害事件なので、全員の両親が呼ばれる。加害者の側なので、校長(教頭?)が、「オリベ、君は彼を殴ったのか?」と詰問する。「はい。ワケは彼に訊いてください」。校長は、マウリシオに「どうしてだね?」と尋ねる。マウリシオは何も答えない。たまりかねた母が、「なぜなの?」と催促する。卑怯なオリベは、「あいつがホモ野郎だから、僕たちで殴ったんです」〔LGTBへの差別発言を堂々とする→2014年のメキシコだから?〕。校長は、「なぜ彼を非難する? なぜそんなことを言う?」とオリベを責めるが、LGTB差別発言自体を咎めているわけではない。だから、オリベは暴走する。「彼に訊いてください」。「マウリシオ、なぜオリベはあんなことを言うんだ?」(1枚目の写真)〔公開の場で、LGTBかもしれない少年に訊く質問ではない〕。マウリシオはうつむいたまま何も言わない(2枚目の写真)。オリベ:「話せよ。お前が、あの日、お前の家で僕にやったことを」。マウリシオは思わず首を振る。マウリシオの父は、「マウリシオ」と発言を促す。オリベの母は、常識があり、「これで終わりにすべきだと思いません?」と発言する。マウリシオの母も、すぐそれに賛同する。しかし、マウリシオの父は、再び「マウリシオ」と発言を促す。マウリシオの諦めたような顔が印象的(3枚目の写真)。クソガキのオリベはダメ押しする。「彼は、僕のをつかむと。それから…」と言い始め、戦法を変え、マウリシオに、「話せよ。お前が、どうやってつかんだか。お前がやった変なこと全部」と言い放つ。マウリシオは、「だけど、彼が望んだんです」と反論する(4枚目の写真)。しかし、その反論には説得力がないばかりか、「やった」という事実は否定していない。だから、マウリシオの父は愕然とし、席を立つ。オリベの父は、息子の態度が恥ずかしいと思ったのか、「オリベ、行くぞ」と声をかける。校長は困った顔をしている。確かに彼の采配は最悪・最低だった。
  
  
  
  

その日の夕食。父は難しい顔をして座っている。マウリシオが恐る恐る席に座ると(1枚目の写真)、父は、不愉快だと言わんばかりに席を立って部屋から出て行く(2枚目の写真)。その後、寝室で横になっている父の横に座った母は、「あの子、まだ頭痛が… いったいどうすれば…」と言い出すが、父は、「放っておけ」の一言。「なぜ?」。「どこも悪くない。頭痛ぐらいなんだ。たかが頭痛でお前が大騒ぎするから、ホモなんかになるんだ」〔この発言もひどい。八つ当たり気味〕
  
  

夜、母が医者に電話をしている。「…分かりました。いいえ。横になっていますが、眠れないんです」(1枚目の写真)「いいえ、熱はありません。頭痛だけです」。実際、マウリシオは、タオルケットを握りしめて苦しそうだ(2枚目の写真)。それを見た父は、息子が可哀想になる。母:「…それでダメなら、また電話します。ありがとうございました、先生。お休みなさい」。電話が終わる。「何だって?」。「薬を飲ませ、朝の様子次第ですって」。父は、「寄こして」、と薬の名前を書いたメモを和すよう促す。「私が行く」。母は、嬉しそうに手渡す(3枚目の写真、矢印はメモ)。
  
  
  

翌朝。マウリシオは目が覚める。母:「気分は良くなった?」。頷く。「じゃあ、休んでらっしゃい」。その母を見て、マウリシオは、「ママ?」と声をかける(1枚目の写真)。さらに、「なぜ、泣いてるの?」と訊く。母は、マウリシオのこめかみにキスをする(2枚目の写真)。「僕が、こんなだから泣いてるんだよね?」。「違う、違うわよ。誓って。ママは、ありのままのあなたが大好きなの」。「パパ、すごく怒ってる?」(3枚目の写真)。「いいえ。怒ってるけど、誰かにって訳じゃない。あなたにじゃないわ。少し時間をあげて」〔母はひたすら優しい〕
  
  
  

ある日、父が、掃き出し窓〔日本みたい〕の外で、「マウリシオ!」と呼ぶ。ボクシング用のサンドバッグを準備した父の前にマウリシオが現れる(1枚目の写真)。「お聞き。もう あんなことは二度と起きて欲しくない。お前の方から先に殴れとは言わんが、やられかけたら、身を守るんだ。いいな?」(2枚目の写真)。そして、バッグを打たせる。最初はやる気がなかったが、父に「ここが、お前を殴った奴の顔だと思え」と言われると、オリベがいる積りで思い切り殴る(3枚目の写真)。
  
  
  

映画のラスト50秒。マウリシオはキッチンでパンケーキを作っている(1枚目の写真)。できあがると、父母が待っている食卓に持って行く。父の顔は何となく複雑だ(2枚目の写真)。しかし、マウリシオ本人はすごく嬉しそう。大きなイチゴ〔日本みたい〕を父にプレゼントする(3枚目の写真)〔マウリシオは、同性愛というよりは性同一性障害のような気もする〕
  
  
  

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